6章 恋愛心理学

1.恋愛心理学の基本知識

恋愛心理学とは恋心や恋愛感情など人間の恋愛に関する心理的要因や心理状態を研究していくものです。恋愛テクニックの正しい意味を理解してオリジナルの恋愛テクニックを実践していくためには、基本的な恋愛心理学の知識を身につけておく必要があります。

これから恋愛心理学を身につけていくにあたって、基本的な3つのことを覚えておきましょう。

(1)刺激

恋愛感情、恋心を抱くきっかけとなる刺激のこと。胸キュン、トキメキなど。

「今の彼って行動的でものすごく優しいから好きなのです」
「彼女の優しそうな笑顔がものすごく可愛いです」

刺激は第一印象だと思われがちですが、たとえば男性が力強い部分や女性を守っている姿を見る場面があったり、女性の何気ない仕草などを見たことがきっかけになって刺激となることがあります。

(2)類似

お互いの共通(類似)する趣味や価値、感性、考え方、共感など。

「今の彼と話をしていると、そうだよねってことが多いのです」
「彼女とはすごく気が合います」

類似は趣味や価値観の一致などがほとんどですが、必ずしもそれだけではなく、話をしていて共通認識などが見つかることで類似となる場合もあります。

(3)相補

お互いが補い合う役割分担のこと。力系は男性、癒しは女性など。

「わたしは優柔不断だから、彼がひっぱっていってくれます」
「彼女が元気づけてくれるから、僕はがんばれます」

お互いに持っていない部分を補い合えることにより相補となりますが、初めて会った人といきなり相補的な部分を見つけるのは難しいでしょう。

2.SVR理論

SVR理論とは1972年に心理学者のマースタインが出会いから恋愛関係から結婚までの関係を三段階としてプロセスを立てた理論です。恋愛心理学の3つの基本知識を時期として三段階に分けたものです。

(1)初期段階(Stimulation)

外見などからの刺激を受けてトキメキ、胸キュンを感じている状態。外見だけでなく、性格や感情表現を見て刺激を受けている状態ともいえます。

(2)価値段階(Value)

趣味や価値観、考え方を共感、共有している状態。相手が悩んでいる時に、その相手の気持ちを共感しているなど。

(3)役割段階(Role)

お互いの役割分担の状態。相手ができないこと、苦手なことなどを補う状態。相手が悩んでいる時に、その相手を慰めたり、元気づけるなど。優柔不断な人と行動力のある人の相補など二人の関係が一つになっている状態。

初期段階では刺激が重要で、外見、性格や感情表現、行動などから理想の恋人の基準になるか判断します。お互いに初期段階をクリアすると、そこから交際することになり中期段階に入ります。中期段階は価値段階といわれ、考え方や趣味、好きなスポーツなど価値観の類似性が重視されます。そして、交際中に将来を考えるようになってくると後期に入り役割段階へと入っていきます。役割段階は共同生活に必要なお互いの相補性が重視されます。また、中期から後期になるにつれて、刺激の重要性が低くなり、価値段階と役割段階の二つが重用となっていきます。

あくまで一般的なプロセスですので絶対的ではありません。たとえば幼なじみや友達関係から恋愛関係が始まると、価値段階や役割段階から始まります。また類似や相補が初期段階の刺激となることもあります。

3.恋心の心理

恋愛感情になるきっかけとなる恋心の心理の知識を身につけておきましょう。全ての人に当てはまるわけではありませんが、知識を身につけておけばオリジナルの恋愛テクニックを作り出す時にとても役立ちます。

(1)類似性の効果

自分とよく似た趣味や価値、感性、考え方などを持った人に類似性(身近にいる存在など)を感じて、安心感が信頼、そして好意につながります。

(2)好意の返報性(互恵性)

人間はたえず誰かに好かれたい欲求や心理を抱いていることから、よほど嫌いな相手でない限り、自分に好意を抱いている相手に好意を抱きやすいといわれています。自分に好意を持ってくれている人のことが気になる心理のことです。

(3)自己是認欲求

褒め上手はモテるとはこのことです。人は自分のことを認めてもらいたい心理があります。褒めてくれる相手、つまり自分の存在価値を認めてくれる相手に好意を抱きます。

(4)接触性の効果

異性の身体(手などに触れる)ことによって好意を持つといわれています。相手に好意を持っていなくても、この接触することによって刺激を感じることがあります。

(5)一点豪華

人の優れた部分を見ると冷静さを失います。たとえば、スポーツ選手などは自分の素質を十分に発揮して表現していることから自分にはない素質に惹かれる心理のことです。

(6)ロマンチシズム

人にはロマンチシズムな心理をもっており、運命的なものを感じて相手に惹かれていく心理があります。偶然も恋愛においてはロマンチシズムを感じさせる一つです。特に男性はロマンチックな人が多くいるようです。

(7)ハロー効果

一つの優れた特徴から他の特徴に対しても過大評価してしまう錯覚のことをハロー効果といいます。たとえば、アクセサリーなどを身につけて可愛いイメージを与えると、性格も可愛いと評価されてしまうことです。

4.恋愛関係と友達関係の違い

男女の間に親友関係は成立するのか?という議論は難しいですが、 友達以上、恋人未満という関係について精神分析の観点からみて、 少し理論的にしています。

精神分析の観点からみた恋愛

恋愛というものを精神分析の観点からみると、基本的に次の二つのことがいえます。

・現実型
二人が共通する関心や興味、趣味の一致などから波長が合ったり、気が合ったりすることから恋愛感情になる場合。

・理想型
意識的な過程がなく、一目惚れなどで最初から恋愛感情になる場合。 人生最初の恋愛感情である初恋もここに含まれます。理想的な相手のイメージが恋愛感情を抱く最大の動機となる場合が多くみられます。

現実型は結婚相手、理想型は恋愛相手に求められることがほとんどでしょう。現実型だけだと、無意識の感情がない(恋愛感情がない)の状態なので友達という位置づけになってしまいます。 ただし、恋愛関係成立の過程においてどこまでが意識的で無意識的であるのかをはっきりと区別することはできません。

※お見合い結婚と恋愛結婚について

日本にはお見合い結婚という制度があります。お見合い結婚は第三者からの現実的な条件の検討からはじまります。あとは本人同士が恋愛感情に発展するかの問題になってきます。
それに対して恋愛結婚は、お互いに恋愛感情からはじまって、現実的な条件を満たしているかが問題になってきます。しかし恋愛には多くの幻想が含まれているので、結婚生活の中でお互いの現実像を見せつけられて、理想像と現実像の違いを思い知らされて悩む人も多くいるわけです。
※参考資料:生活の中の精神分析(誠信書房)

5.距離の心理学

ヤマアラシのジレンマというものがあります。ヤマアラシという動物には背中に鋭いハリのある動物です。寒さに震える二匹のヤマアラシがお互いを暖め合うために身を寄せていました。しかし、近づきすぎるとお互いの身体にハリが刺さって傷つき、離れすぎていると凍えてしまいます。そこで二匹のヤマアラシは近づいたり離れたりしながら、お互いに傷つけず、暖かくなるちょうどいい距離を見つけました。

人間関係の距離も近づきすぎると相手を不快にさせるような表現をして関係が悪化します。逆に離れすぎてしまうと無関心になり関係が壊れてしまいます。つまり、近すぎず離れすぎない「ちょうどいい距離」を見つけることが大切になってくるわけです。

(1)心理的距離

心理的距離とは信頼関係や親密さなどお互いの心の距離のことです。心理的距離も近づきすぎると相手を傷つけるような発言や表現をしてしまい関係が悪化します。離れすぎてしまうと、相手に無関心になっていき関係が壊れてしまいます。

(2)物理的距離

物理的距離とはパーソナルスペースとも呼ばれ、お互いの物理的な距離のことです。お互いのパーソナルスペースが近づいてくると、いつでも身体が触れあえるくらい親密な関係になります。あまり遠すぎると親密な話ができません。

(3)テリトリー

テリトリーとはなわばりのことで、侵入を許さない空間のことです。人間は心を許した相手にしかテリトリーへの進入を許しません。たとえば、満員電車で他人が自分の密接な距離(物理的距離が近すぎる場所)にいると不快になります。これは自分のテリトリーに他人が勝手に進入している状態だからなのです。

(4)心理的距離と物理的距離について

心理的距離と物理的距離は非常に密接した関係があります。物理的距離は心理的距離の表れでもあります。たとえば、公園のベンチに座っているカップルが、常に肩が触れあうような密接な物理的距離にいれば親密さを感じられるので、心理的距離も近いといえます。

恋愛でも意中の相手との距離を常に意識しておくと、現在二人の関係がどこまで進展しているのかの見極めにもなります。

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